ワッペン用刺繍データ作製講座

今日は平和な一日のはずだったのに、某スポーツ系アパレルさんのお陰で・・・。(苦笑)

時期的には来秋冬のパンチ依頼が来てるはずなのですが、いっこうに現れず・・・遂にクビ?とか・・・。

うちはデータを作るだけで、実際縫われるのは商社さん手配の各工場(主に中国)。

朝からメールや電話で・・・

「〇〇のデータ上がってます?」

「・・・すみません、パンチ作製の依頼自体が来てないんですけど・・・」

何も来ていないのでどうしようもありませんよねえ?(苦笑)

で、実際デザインを作る担当者の方が中国出張で・・・まだデータが出来てないとか?

明日くらいにデータが送られてきて、「納期いつになります?」って感じになるんでしょう。

休み前にやめてよ~!って感じです。(怖)


さて、昨日mamaさんよりご依頼?のありました、ワッペン講座・・・行ってみましょうか?(笑)

おいおい、暇なのか?

・・・。



今回はワッペンのパンチングです。

例によって、完全な僕個人の私見ですので・・・。

今回はかなり長い上に、意味不明な点も多いと思いますので、気合を入れて読んでください!(笑)


まず、データ自体はアップリケ刺繍と同じです。

要は、何らかの形状の生地の「縁をかがる」というデータです。

図案はmamaさんのところから拝借して来ました、数字の「7」。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_16213962.jpg
とりあえず、完成予想図です。

さて、図案を取り込みまして、まずはアウトラインをとって行きます。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_16222597.jpg
赤い部分が刺繍のかがり部分になりますので、その外側をランニングで・・・。

出来上がったランニングの等高線を作ります。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_1625415.jpg
生地やデザインによって変えますが、今回は外側から1mm程度内側にします。

これがワッペン(アップリケ)の型抜き線であり、アップリケを貼る案内線になります。

それから一番最初に作った大外のランニングデータをサテンステッチに変換。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_16262585.jpg
振り幅は4mmにしました。

そのあと、アップリケの仮止めをランニングステッチで作って、順番を入れ替えて終了。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_16274649.jpg
かなり手抜きですが、流れ的にはこんな感じです。

データとしては、こんな感じ。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_17134286.jpg
案内線(赤)が何でこんなところに? → 「第2回ワッペン講座」をご参照ください!

このデータを目的別に分解してみると・・・。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_17182163.jpg
1はそのままですね!この線に合わせて、型抜きした生地をセットします。

このステッチの終わりは、デザインの一番高いところに持って来ます。

じゃないと、生地が貼りにくいですからね!糸を切る場合は問題ありませんが、ワッペンは糸切りが少ない方が・・・。

2は、貼った生地をとりあえず留め付けるステッチです。

ここでは、皆さんいろいろと縫い方に関するご意見がおありかと思いますが・・・。

まず、貼った生地がズレないように、素早く留め付ける必要があります。

ここでいきなり4番目のジグザグステッチで行っちゃうと、素材によっては生地が動いてしまうことがあります。

(パンチは楽なんですけどねえ?「ちゃんと作れ!」って、毎回オペレーターさんに怒られます。(苦笑))

スプレーボンドの量が少ないとか、そういう問題以外に、アップリケ刺繍の場合だと、

近年シルケット加工など特殊加工を施した生地が多く、「糊が全く効かない」なんてことがざらにあるんです。

なので、素早く一周してキッチリと案内線通りに留め付けたい!ですから最小限のステッチで・・・。

場合によっては、一か所だけ留めて、糸を切って、反対側にジャンプして留め付け・・・。

そこまでしないと動いちゃう素材もあります。

あと、なぜ「V」なのか?ブランケットでもいいんじゃないか?これには理由があります。

ある時、白のブロードを白糸でかがるワッペンを作ったのですが、この仮止めが何となく見える・・・。

そんなクレームがありまして・・・原因としては、
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_1727572.jpg
ブランケットは基本的に2本の糸が重なるようになりますよね?

この厚み(色濃度)が表に響いて、盛り上がったり、うっすらとそこだけ濃くなったり・・・淡い色の時は特に・・・。

また、上から被さってくるサテンと同じ糸方向というのも問題で、2色のアップリケの仮止めを1色で済ませた時、

違う色が見えるという現象が出たり・・・。(「なんちゃってパンチング講座 その2」をご参照ください!)

そんなことがあってから、「V」で留めるようになりました。

3は安心料的なものですね。あると安全。ちゃんととまっているかどうかの確認もし易いです。

4は、素材によって必要か必要でないか?フェルトや合皮等の、解れない生地の場合はいらないかも知れませんが、

ブロードやサテンなんかの織物はどうしても解れやすいので、これも安全のために入れますね。

で、最後にサテンですが、これもデザインで最初から決まっている振り幅にするのが基本ですが、

あまり細いと、パンク(縁かがりが外れる)や生地のはみ出しが起こりますので、要注意ですね!

素材にもよりますが、2~2.5mmが限界かと・・・。

また、逆に振り幅が広くても、出来るだけワッペンの外側まで生地が入っていた方が安全ですし、

出来上がった時の「芯」のような役割もしてくれるので、形状が崩れにくいです。


では、実践です。たまたま1枚だけのワッペンの発注がありましたので・・・。(苦笑)

ワッペンシートを使ったワッペンです。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_1748428.jpg
ワッペンシートは白と黒しかありませんので、基本的には縁の刺繍と同じ色もしくは、近い色を使います。

また、実際に貼り付ける生地の色に合わせた方がイイ場合もありますし、どうしても色が合わない場合は、

色の種類の多い、ポリエステルサテンなんかを代用することも出来ます。

今回のワッペン生地はエンブクロス。ヒートカットしないと、必ず解れますので、メジャーな素材ですが要注意!

で、ワッペンシートの上を歩かせた案内線に合わせて、スプレーボンドを使って生地を貼り付けます。

ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_17494924.jpg
出来るだけ糸切り箇所を少なくした方があとが楽ですので、最初に縁をかがってしまう方がいいのですが、

今回の場合、あとから中の文字を縫うと、パッカリング(皺)が出てしまうので、仮止めした後に中を仕上げます。

そのあと、縁をかがって、
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_1752213.jpg
刺繍が終わったら、半田ごてでヒートカットで終了。
ワッペン用刺繍データ作製講座_d0061489_1755108.jpg
後作業をなるべく楽にするために、糸の入口・出口は同じ箇所に集めておいてカット。

中央の文字はワッペンのなるべく内側にしましたので、このままでもOK!

注意点としましては、ワッペン素材がブロードやツイルのような解れやすい生地の場合は、しっかりと芯貼りをすること。

エンブクロスやサテン等のポリエステル素材の場合はヒートカット必須です。洗濯したら、必ず解れます。

また、最後に半田ごてを使ってカットしますので、刺繍糸はレーヨン。ポリエステルやアクリルは溶けちゃいます。

下糸は綿糸等の、熱に強い糸を使用してください!

あと、生地のカットは、案内線だけをプリントアウトして、それを生地に貼り付けてハサミカットするといいですよ!

そんなところでしょうか?

何か抜けてるかなあ?まあ、誰かが補足してくれるでしょう!

以上、長々と最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

by ykm94731 | 2010-11-19 18:35 | 刺繍屋のお仕事 | Comments(14)

Commented by タマヤ・ラモーン at 2010-11-19 19:29 x
お疲れ様です。
ワッペンシートにアップリケのようにしてワッペンって作るんですか!?
恥ずかしながら始めてしりました(滝汗)
これまで生地に直接打ってヒートカットしてました、私。
確かにワッペンシートの方が切り口が綺麗そうですね!

皆さんのブログはホント勉強になります。
Commented by ykm94731 at 2010-11-19 19:35
タマヤ・ラモーン 様、こんばんは!
エンブクロスやフェルトにダイレクトってのもありますが、縁周りが硬化したり、綺麗にならないので、面倒ですがこういうやり方に・・・。
何が正解ってのはないので、お客さんが喜んでくれたらそれでOK!ですよね?
Commented by happy2525mama at 2010-11-19 20:12
猫島先生 とても丁寧な解説 ありがとうございますm(__)m

案内線は、5回も有るのですね。(驚) 
もう一度、案内線を内側からやるっていう所から作り直して、来週にも再度挑戦してみます。

本当に、お忙しいのにありがとうございました。
とても判りやすく、先生のやり方でしたら、安心して作業が出来そうです。
Commented by ykm94731 at 2010-11-19 20:27
mamaさん、お疲れ様です。

案内線が5回?どこの部分のことでしょう?
Commented by happy2525mama at 2010-11-19 20:46
ごめんなさい。
『5回の工程で出来ている』 の書き間違いです。
Commented by ykm94731 at 2010-11-19 20:51
なるほど・・・ちょっと焦りましたよ~。(苦笑)

それから、お願いですから「先生」はやめてくださいね!師匠だけで十分。(笑)
Commented by nikkou10619 at 2010-11-19 21:49
ワッペンシートは作業服にワッペンを圧着だけで使用して洗濯も毎日する
との話で、以前はエンブクロスに直接で芯にハイボンを使っていたのですが
剥がれてくる恐れがあり使う様になりました。

 一度型を抜いているので綺麗になりますよね♪ 手間ですけど生地のロスも
無くていいやり方だと思います。
 生地のカットは私なりにブログにUPしてみました。パンチは「うん!うん!
」とうなずいて 
たまに 「う~ん 理にかなってる」とぶつぶつ言っていました。(こわい)
 
 
Commented by tama70125 at 2010-11-19 23:15
この前アップリケをやってみたので、少しは話が見えます。

猫のアップリケ、雰囲気はよい感じにできそうなので、今の課題が終わったら、やってみようかな?と思います。

Commented by ykm94731 at 2010-11-19 23:27
nikkouさん、お疲れ様です。

いろいろなやり方がありますよねえ?
今はいろいろ情報交換が出来て、資材なんかもネットで発見出来たり・・・イイ時代になりました。
いろいろやってみて、その失敗や経験が積み重なって、自分のスキルを高めてくれるんだと思います。
頑張りましょう!
パンチはまだまだよくわかりません・・・一生わからないんでしょうねえ?
そういうものだと思います。やっぱり自己満足?が一番精神衛生上イイんじゃないでしょうか?(笑)
Commented by ykm94731 at 2010-11-19 23:29
tamaさん、こんばんは。
いろいろ奥が深いでしょう・・・でも、tamaさんが作られるBAGに比べたら・・・。(苦笑)
次は何を作られるのか?楽しみにしておりますので・・・。
Commented by kawawadesu at 2010-11-20 00:20 x
お疲れ様です。
専務の説明の仕方は上手です。
加工・パンチは出来ても人に伝授するのって難しいですよね。(苦笑)

私の場合、自分は分かってるけど・・・上手く伝わらない!
教えるのが下手なんですよね~(笑)
Commented by 北河内の異端児 at 2010-11-20 02:51 x
アップリケの場合、僕はコーレルに画像取り込んで、7の場合はまず内側の黒の部分(生地部分)をまずベジェツールでアウトライン取って、4ミリ幅の縁取りなら、そこから3ミリの等高線かけたとこがカットライン(案内線)で、さらにそこから1ミリの等高線かけるかなぁ。
その画像をビットマップ保存して、コーレルからエクスポートやったっけ?で刺繍ソフトにもってきて、パンチするってな工程です。
縁取りをサテンで埋める場合、留め縫いはおおかたランニングで走ってます。
Commented by ykm94731 at 2010-11-20 08:12
kawawaさん、おはようございます。
文章で伝えるのは難しいですねえ・・・僕は教えるの下手です。
人を育てられなくて、数人は辞めさてたなあ・・・「もう、自分でやる!」って。(汗)
Commented by ykm94731 at 2010-11-20 08:14
北河内先輩ですよねえ?何か勝手が違うなあ・・・。(笑)
コーレルを駆使されてるんですねえ?凄いなあ・・・僕は全然駄目。
等高線(オフセット)等、全てパンチソフトでやっちゃいます。
留め縫いはランニングですよ・・・あとはかなり手抜きですが・・・。(苦笑)